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2017/10/07

チーム学習で適用できる2つのPBL

Tweet ThisSend to Facebook | by:事務局
3学期制の学校では、既に授業が始まっていると思いますが、2学期制の学校では、授業が始まったところ、という感じでしょうか。

今期はどのような学習が展開されるでしょうか。

グループ学習等、協調的に学ぶ授業も多いと思いますが、

「授業で採用しているのは、プロブレム・ベースド・ラーニングですか?プロジェクト・ベースド・ラーニングですか?」

と聞かれたら、どのように答えますか?

これらは、どちらも「PBL」と略されますが、
改めて問われると、うーん、どっちなんだろう?
と、筆者は考えてしまいます。

厳密に区別する必要はないと思うものの、
これら2つは別物ですし、授業の設計を他者に説明する際には、
やはり、ある程度区別できたほうがよいように思います。

ここでは、「プロブレム・ベースド・ラーニング」を「前者」、
「プロジェクト・ベースド・ラーニング」を「後者」とします。

前者は、医療関係の専門家を養成する過程での実施状況の報告が多いかもしれません。

医療従事者を養成する際に症例研究を行うので、
「こういった症例の場合にどうするか」という
問題が明確であり、その解決案の仮説をチームで考えることが、現場で協力しながら判断していく力を培います。

問題解決の学習は、
・事例から問題を把握してリサーチクエスチョンを設定する
・解決策の仮説をたてる
・不足している知識を整理して学習課題とする
・分担して情報を収集する
・収集した情報に基づいて仮説検証を行う
・新たな知識と既有の知識を統合する
(参考:松下佳代編著「ディープ・アクティブラーニング」)

というプロセスを辿ります。
そして、期待される成果は、問題の解決策と
その周辺知識や概念の習得です。

どのような知識をパワーアップさせるのか、ということが明確なので、問題解決能力の育成や知識習得を目的として採用されます。

一方で、プロジェクト・ベースド・ラーニングが示す問いは、幅広い発想を問うものであり、問題が明確ではありません。

例えば、「理想の教材を作ってください」といったように
自由度が高い課題になり、この事例の場合だと、実際の教材が成果物として期待されます。
結論に至るまでの学習プロセスもさまざまです。
学習に要する時間も、プロブレム・ベースド・ラーニングに比べると長い時間が必要となります。

そのため、プロジェクト・ベースド・ラーニングは、工学系で採用されやすいようです。

さて、このように2つの学習を確認したところで、
本研究所が発行している書籍

 「学習ガイドブック 教育の技術と方法」

で採用している方法が、どちらなのかを説明するとしたら、

全体的にはプロジェクト・ベースド・ラーニングで
構成されていますが、
プロジェクト・ベースド・ラーニングの要素も
若干含まれている状態だといえます。

前半は、「理想の学校をつくる」という
かなり自由度が高いテーマを提示しています。

これは、問題意識がまだ明確でないと想定しており、
だれもが参加しやすい状態をつくるためです。
模造紙で学校のラフデザインなどを示すことが期待されていますが、あまり制約や条件は厳しくしていません。

後半は、「読解力を高める授業をつくる」という
テーマですが、前半よりも条件や制約を具体的に示しています。

これは、前半の学習を通して、さまざまな教育問題に関する情報に触れているため、課題意識が前半より明確になっており、さまざまな制約のある課題に取り組むことができるという前提で、課題を設定しているためです。

学習上の問題をやや具体的に示しており、その解決の仮説をたてて情報を収集し、検証するというプロセスは、プロブレム・ベースド・ラーニングに共通するところだと思われますが、学習時間が数週間確保されているので、具体的な進め方はチームに依存しています。

そして、成果物は、実際の教材とそれを説明するレポートを求めていますので、やはり、大枠は、プロジェクト・ベースド・ラーニングの枠組みで構成されていると言えるでしょう。

このように、実際の授業について、設計の枠組みを見直すと、基本の立ち位置に返ることができますね。

筆者も、教材を作成していた頃はこのような前提に立っていたのだな、ということが見直すことができましたし、それを再確認して

 「いまもこのままでいいのかな?」

と疑問の眼差しをもって、目の前の状態と改めて比較して、改良点や改革が必要な部分を見いだそうとしています。


今回のブログを執筆するにあたって、
とても参考になった良書は以下の通りです。


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